数年前まで、ドラックストアで買えるシャンプーは500円程度のものばかりでしたが、近年はドラックストアでも1,500円程度するものが増えましたよね。
種類が増えすぎて何を買えばいいのかわからないという方は多いのではないでしょうか?
そこで今回は、界面活性剤の特徴などを踏まえた、シャンプーの選び方を詳しく解説していきます。
シャンプーとは
シャンプーと言えば、頭皮や髪の毛を洗うためのもので、肌に悪いものと思っている方も多いと思います。
確かに、数十年前までは洗浄力が強くて安いものが主流だったため、極端に言うと頭髪用の洗剤でしかありませんでした。
しかし、現在では、ドラックストアでも、むしろ使った方がヘアケア、頭皮ケアになるシャンプーも売られています。
かつて、シャンプーは薄利多売の商品としてメーカーが価格競争をしていましたが、2015年にボタニストシャンプーがヒットしたのをきっかけに、少し価格が高めでもヘアケアや頭皮ケアなど付加価値をつけたシャンプーの方が儲かることがわかり、市場が変化しました。
もちろん、現在でも洗浄力が強くて安いシャンプーもありますが、シャンプーが肌に悪いというのはもう過去の話です。
界面活性剤とは
シャンプーが肌に悪いと思われている最大の原因がこの界面活性剤だと思います。
ただ、ほどんどの方は、どんなものかよく知らずに名前の雰囲気で悪いものと思っているのではないでしょうか。
界面活性剤とは、水と油を混じりあわせることができるようにする成分です。
通常、油は水を弾くので、水で油汚れは落とせませんよね。
しかし、そこに界面活性剤が加わると、油と水が馴染むようになるので、油を水で浮かして落とすことができるようになります。
界面活性剤を嫌う人は食器用洗剤のイメージが強いようで、よく引き合いに出されますが、シャンプーのみならず、原料に水と油が一緒に使われている化粧品にはすべて使われています。
確かに、シャンプーや洗顔料は洗浄目的で主成分として使われるので、その点は食器用洗剤と同じなのですが、界面活性剤にも様々な種類があり、すべての界面活性剤が肌に悪いというのは間違った解釈です。
石けんも界面活性剤
シャンプーの界面活性剤が肌に悪いと思いこみ、石けんを使用する人がいますが、石けんも界面活性剤です。
石けんは脂肪酸とアルカリを混ぜて作られるので、無添加であろうと純石けんであろうと、石けんはすべて弱アルカリ性の界面活性剤です。
また、比較的洗浄力も強く、肌に石けんカスも残りやすいうえ、ヘアケア成分も入っていないので頭皮にも髪にもいいとは言えません。
シャンプーでハゲるという方がいますが、シャンプーでハゲるなら石けんでもハゲますのでご注意ください。

それでは実際にシャンプーの選び方を解説していきます。
シャンプーの選び方
シャンプーを選ぶ際は、どんな界面活性剤が使われているかが一番重要です。
どんなにヘアケア成分がたくさん入っていようとも、ヘアケアに適していない界面活性剤が主成分の場合、説得力は全くなくなります。
なぜならシャンプーの50~70%は水でできており、水を70%とした場合、その他の配合比率は以下の通りであるためです。

その他に該当する成分は以下の通り。
- ヘアケア成分
- 頭皮ケア成分
- 可溶化剤
- 防腐剤
- 酸化防止剤
- ph調整剤
- 金属イオン封鎖剤
- 防腐剤
- 香料
これらすべて合わせて10%です。
つまり、シャンプーの主成分は界面活性剤であり、それ以外の成分は極めて少ない配合量です。
ヘアケア、頭皮ケア成分以外は、少ない配合量で効果を発揮するものですが、ケア成分は少ないと効果を感じない場合もあります。
配合量までは厳密にはわからないので、シャンプーを選ぶ際は最低限、界面活性剤だけ見ておけばOKです。
全成分表示義務
シャンプーは薬事法により、配合成分を配合量の多い順に記載しなければならないというルールがあります。
シャンプーの特徴を掴む一番の手がかりは、そのシャンプーにいちばん多く配合されている界面活性剤の種類です。
いちばん多く配合されている界面活性剤は基剤と呼ばれ、そのシャンプーの属性を決めます。
ほとんどの場合、水の次に記載されているので覚えておきましょう。
界面活性剤よりもグリセリンの方が多く入っている場合もあります。その場合はグリセリンの次に記載されているものが界面活性剤であることが多いです。
界面活性剤の種類
通常、シャンプーは複数の界面活性剤を調合して作られます。
単体では洗浄力が強くても、低刺激な界面活性剤と組み合わせることで、総合的にマイルドな仕上がりにすることも十分可能です。
また、男性や脂性肌の方などは、洗浄力が優しいシャンプーでは洗浄力が足りずに、かえって頭皮トラブルを起こすこともあります。
重要なのは、自分の肌質にあったシャンプーを選ぶことです。

それでは界面活性剤の種類を紹介します。
硫酸系(合成)
- ラウレス硫酸Na
- ラウリル硫酸Na
洗浄力が強くコストも安いため、市販の安価なシャンプーの主成分としてよく使われています。
一部では刺激性が強いとして知られていますが、その刺激とは、洗浄力が強いために、頭皮の油分や常在菌を必要以上に取りすぎてしまい、乾燥することによって刺激になるという意味です。
基本的に、これらが基剤の場合は、しっかり汚れを落とすことをいちばんの目的としたシャンプーと考えていいでしょう。
ヘアケア効果は期待できません。
一方で、これらが主成分であってもマイルドな界面活性剤と組み合わせることによって低刺激に仕上げることはできるので、敏感肌向けのシャンプーの基剤として使用されることもあります。
敏感肌にも脂性肌の人と乾燥肌の人がおり、すべての人に洗浄力の優しいものが合うとは限りません。
スルホン酸系(合成)
- オレフィン(C14-16)スルホン酸Na
- アルキル(C14-18)スルホン酸Na
硫酸系界面活性剤と同等の洗浄力を持ちます。
ラウレス硫酸Naの刺激性が知られているので、その代用として近年市販のシャンプーに使われることが多くなりました。
これらが基剤の場合も、硫酸系と同じく、しっかり汚れを落とすことをいちばんの目的としたシャンプーと考えていいと思います。
スルホコハク酸系
- スルホコハク酸ラウレス2Na
- スルホコハク酸(c12-14)パレス2Na
石油やヤシ油を原料とした界面活性剤です。
硫酸系やスルホン酸系に比べると控えめとなっていますが、洗浄力は比較的強い方です。
こちらが基剤の場合は、刺激にならない程度に洗浄力が強いシャンプーという感じです。
ですので、スカルプシャンプーの基剤として使われたり、低刺激シャンプーの洗浄力補強のために、補助剤として使われているのもよく見かけます。
酸性石けん系
- ラウレス-(数字)カルボン酸Na
- ラウリルグリコール酢酸na
ラウレス、ラウリルとつくので硫酸系と勘違いされがちですが、酸性石けん系の界面活性剤です。
石けんは弱アルカリ性と話しましたが、こちらはアルコールや酸から生成されるため弱酸性です。
強すぎず、弱すぎない適度な洗浄力なので、これが基剤のシャンプーは幅広い肌質の方々に使っていただけると思います。
両性界面活性剤
- ラウラミドプロピルベタイン
- コカミドプロピルベタイン
- ココアンホ酢酸Na
- ラウリルヒドロキシスルタイン
ベビーシャンプーの主成分として使われるほど低刺激でおだやかな洗浄力です。
~ベタインとつくものはベタイン系と呼ばれており、ヘアカラーの退色を防ぐ効果があるともいわれています。
昨今は、これらを基剤としたシャンプーがドラックストアでも増えたため、価格も高くなりました。
こちらを基剤とするシャンプーは、敏感肌用に使われることも多く、どちらかと言えば乾燥肌向けとなるので、男性や脂性肌の方には洗浄力が足りなくなってくるかもしれません。
タウリン系
- ココイルメチルタウリンNa
きめ細やかな泡立ちが特徴の界面活性剤です。
こちらも非常に低刺激でおだやかな洗浄力を持ちながらも、さっぱりとした洗いあがりになります。
頭皮ケア向けのシャンプーの基剤として使われていることが多い印象です。
ちなみに、シャンプーの市場を変えたパイオニア的存在でもあるボタニストシャンプーはこちらを基剤として使用しています。
ノニオン系
- ラウリルグルコシド
- ラウリン酸ポリグリセリル-10
- コカミドDEA
- コカミドメチルMEA
両性界面活性剤、タウリン系と同じく低刺激でおだやかな洗浄力の界面活性剤です。
基剤として使われるよりも、泡立ちを補強するために使われることが多いのが特徴です。
アミノ酸系
- ラウロイルメチルアラニンNa
- ココイルグルタミン酸TEA
- ラウロイルサルコシンTEA
低刺激かつ高保水という、ヘアケア、頭皮ケアともに優れた界面活性剤です。
アミノ酸と言えば、人間を構成する成分ということはご存知の方も多いと思いますが、そのアミノ酸が毛髪や頭皮へ浸透することにより、ダメージを補修するとともに潤いを与えます。
その分、洗浄力は控えめです。
ラウロイルメチルアラニンNaは、アミノ酸系界面活性剤の中では比較的洗浄力はある方で、さっぱり仕上した仕上がりに。
ココイルグルタミン酸TEAは、毛髪に吸着し髪の手触りを良くするエモリエント効果があるので、しっとり仕上がります。
気を付けてほしいのが、アミノ酸系界面活性剤の中でも、ラウロイルサルコシンTEAだけは例外で、殺菌作用があり、洗浄力が硫酸系界面活性剤と同等にあります。
アミノ酸系シャンプーを謳いながら、ラウロイルサルコシンTEAを基剤としている安価なシャンプーもありますのでご注意ください。
PPT系
- ココイル加水分解ケラチンk
- ココイル加水分解コラーゲンK
- ラウロイル加水分解シルクNa
アミノ酸系界面活性剤よりも更に上質な界面活性剤です。
PPTとはタンパク質を加水分解してより浸透しやすくしたもので、もはや美容液ともいわれています。
一方で、明確に洗浄力が弱いので、これらが基剤となっているシャンプーは基本的に予洗いをしないと泡立たないことが多いです。
使いにくさは否めませんが、上質であることは間違いないため、乾燥肌でハイダメージ毛の方にオススメです。
\PPT系シャンプー/
界面活性剤まとめ
界面活性剤の洗浄力は以下の通りです。
基本的に、品質が良くなるほど、洗浄力が弱まる傾向にあります。
硫酸系 | 強い |
スルホン酸系 | 強い |
スルホコハク酸系 | 強め |
酸性石けん系 | ふつう |
両性界面活性剤 | おだやか |
タウリン系 | おだやか |
ノニオン系 | おだやか |
アミノ酸系 | 控えめ |
PPT系 | 弱い |
基本的に、これらの界面活性剤が複数調合されて作られるので、まずは基剤を確認して大まかな傾向を捉え、そのあと補助で使われている界面活性剤も確かめて洗浄力を予測します。
市販のシャンプーとサロンシャンプーの違いは?
最近では、市販のシャンプーでもサロン級と謳われるものが増えましたよね。
実際に成分表を見ても、サロンシャンプーと遜色ないクオリティであることが多いです。
では、なぜ価格に差があるのでしょうか?
濃度が違う
市販のシャンプーとサロンシャンプーの価格差は濃度の違いにあります。
界面活性剤や美容成分には、同じ成分でも濃度の違うものがあり、当然濃度が薄ければ効果もコストも下がります。
一方で、成分表には成分の名称だけ記載すればいいので、表記上は同じものです。
この点は、成分表ではわかりませんが、基本的にコストがかかるものを安く売ることはできません。
ですので、シャンプーの価格が安い場合、いくら成分表が豪華でも、いい成分の濃度は薄く、コストのかからない成分の濃度が濃いと推測できます。
例えばアミノ酸系シャンプーでアミノ酸の効果を実感できる価格帯としては、1ml換算したときに7円以上のものといわれています。
ちなみに、ドラッグストアのアミノ酸系シャンプーはだいたい1mlあたり4円前後です。
髪のダメージが激しいなど、ヘアケアの効果をしっかり感じたい方は、サロンシャンプーから選ぶのをオススメします。
一方で、低刺激性や髪のコンディションを整える程度の効果を求めるのであれば、ドラッグストアのシャンプーで十分です。
価格帯も自分の髪の状態に合わせて選びましょう。
ボトルのデザインもチェック
成分や濃度のほかに、シャンプーの価格に影響するものとしてわかりやすいのが、ボトルのデザインです。
実はシャンプーの製造でいちばんコストがかかるのはボトルです。
ボトルが以下のような場合は、ボトルにコストがかかっているため、シャンプーの価格が高くなるか、成分の濃度が薄くなる可能性があります。
- カラフル
- 形がいびつ
- ガラス製など高級感がある素材
シャンプーのボトルには規格があるため、それに外れれば外れるほど高くなります。
カラーは1色増えるごとに値段が加算されるため、カラフルであるほどコストがかかります。
また、プッシュ式よりポンプ式の方が高いです。
マーケティングとして見た目は非常に重要なため、中身より見た目の商品も数多くあります。
特に昨今はSNS時代でもあり、バズを狙った華美な見た目のボトルも増えています。
とはいえ、シンプルなボトルだからといって、成分の濃度が濃いとも限りませんが、シャンプーを選ぶ際は、シンプルなボトルのものから選ぶんだ方が無難です。
広告やテレビCMで見かけるもの
広告やテレビCMでよく見かけるものを買うという方も多いと思います。
人間はよく見かけるものを良いものとして認識してしまうという特性があり、宣伝活動はそれを利用したマーケティングのひとつです。
それに、そもそも知名度がないと商品は売れませんよね。
ですので、企業は商品価格の70%程度を広告宣伝費にかけると言われています。
つまり、よく広告で見かけるものほど、広告宣伝にコストをかけているため、中身の品質に影響がでてくるというわけです。
メーカーのマーケティングにはお金を払わないという意識を持ちましょう。
シャンプーの選び方まとめ
結論、シャンプーを選ぶ際の最低限の確認事項は以下の通りです。
- 成分表の水の次に書かれている界面活性剤(基剤)の種類を確認
- 補助で使わているその他の界面活性剤も確認し自分の肌質に合う洗浄力かを判断
ヘアケアもしっかりしたい方は以下となります。
- サロンシャンプーから探す
- ボトルがシンプルなものを探す
- 価格を見る(1mlあたり7円以上が目安)
- 成分表の水の次に書かれている界面活性剤(基剤)の種類を確認
- 補助で使わているその他の界面活性剤も確認し、ヘアケアに適した洗浄成分かを判断
- 価格、成分、ボトルのデザイン、知名度などから総合的に見て濃度を判断
しっとり仕上げたいかさっぱりさせたいかなどで見るところがまた増えますが、基本はこの通りです。
一見難しそうに感じますが、界面活性剤の名称さえ覚えれば案外簡単です。
ぜひ、シャンプー選びの参考にしてください!